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ローカルLLMの作り方と必要スペック
この記事でできるようになること読み終えると、自分のパソコンでローカルLLMを動かす最短の手順と、社内でAIを動かす環境が何でできているか、自社には何GBの機器が要るか、OllamaとvLLMのどちらを選ぶか、どの順番で組むかの見当がつきます。
ローカルLLMの構築は「推論エンジン・ゲートウェイ・チャット画面・利用記録」の4層でできています。機器を決めるのに必要な数字は2つだけで、「動かすモデルの大きさ」と「同時に使う人数」です。前者がメモリ容量を、後者が推論エンジンの選択(Ollama か vLLM か)を決めます。必要メモリはおおまかにパラメータ数(B)× 0.6 GB(4ビット量子化の場合)+余裕で見積もれます。自分のパソコンで試すだけなら、Ollama を入れて ollama run の1行で動きます。そして社内向けの構築の順番は、機器からではなく「どの業務を載せるか」からです。
| メモリ(GPUのVRAM/Macは統合メモリ) | 動かせるモデルの目安(4ビット) | できること |
|---|---|---|
| 8GB | 7〜8B | 要約・下書きを1〜数人で試す |
| 16GB | 14B | 文書作成・翻訳。部門で試す |
| 24〜32GB | 27〜32B | 社内チャットの実用域。1部門10〜30人 |
| 48GB以上 | 70B | 高い精度が要る文書。医療の要約など |
| 96〜128GB | 120B級 | 大きなモデルを1台で。速度は落ちる |
ローカルLLMに必要なスペックは、ほぼメモリの量で決まります。WindowsやLinuxのパソコンならGPUのVRAM、Macなら統合メモリの量を見てください。VRAMに載り切らない分はパソコン本体のメモリに逃がして動きますが、遅くなります。GPUが無いパソコンでも、CPUだけで動かすことはできます(遅い)。上の表は公表ベンチマークからの参考値で、計算の仕方は02章に、実際に動かす手順は05章にあります。
| この記事の数値について。速度(tok/s)やメモリの数字は、すべて公表されているベンチマーク記事からの参考値で、出所を各表に付けています。筆者自身の実測はまだありません。手元の Apple M5 Pro(24GB)で構築を進めており、実測が取れ次第この記事を更新します。参考値は機種・量子化・コンテキスト長・測り方で大きく変わるので、桁と傾向を読む材料としてお使いください。 |
前の記事ローカルLLM導入の費用は42万円から2,425万円では「いくらかかるか」と「どの型を選ぶか」を書きました。この記事はその続きで、実際に何を組むのか、機器はどう決めるのかを、情報システム担当の方や、自分で手を動かそうとしている方に向けて整理します。
01 · Layers
構成は4層。何を組むのか
「ローカルLLMを入れる」と言うとモデルのことだけを考えがちですが、社内で使える形にするには次の4層が要ります。どれもオープンソースで揃います。
| 層 | 役割 | 代表的なオープンソース | 無いとどうなるか |
|---|---|---|---|
| ① 推論エンジン | モデルをメモリに載せ、質問に答えを返す本体 | Ollama/vLLM/llama.cpp | 何も動かない |
| ② ゲートウェイ | 複数のモデルや台を1つの窓口にまとめ、認証・振り分け・上限を持つ | LiteLLM | 台やモデルを増やすたびに利用者側の設定が変わる。誰が使ったかを一元で押さえられない |
| ③ チャット画面 | 社員が使う画面。文書の貼り付け、履歴、部門別の設定 | Open WebUI 等 | エンジニア以外が使えない |
| ④ 利用記録 | 誰が・いつ・どのモデルに・何を入れたかの記録と、日次・月次の要約 | Langfuse 等 | 監査・認証の観点で許可が出ない。「AIは禁止」に戻る |
①だけなら1時間で動きます。業務で使える状態にするのは②〜④のほうで、構築の手間の大半はここにあります。とくに④は機器の値段に含まれない工程なのに、無いと元の禁止に戻る部分です。ここは前の記事の「機器の値段に含まれない工程がある」で詳しく書きました。
02 · Memory
必要メモリの決め方:モデルの大きさ × 量子化
機器選びで最初に決まるのはメモリ容量です。計算はおおまかに次の式で足ります。
| 必要メモリ(GB)≒ パラメータ数(B)× 量子化の係数 + KVキャッシュ + 余裕 係数の目安:4ビット(Q4_K_M)≒ 0.6/8ビット(Q8)≒ 1.1/16ビット(FP16)≒ 2.0 |
「量子化」は、モデルの重みを粗い精度で保存して容量を減らす手法です。4ビットにすると容量は元の3割程度になり、精度の低下は多くの業務用途で許容範囲とされています。社内利用で現実的なのは4ビット前提で、上の係数0.6で見積もると次の目安になります。
| モデルの大きさ | 4ビットでの重み | 必要メモリの目安 | 用途の目安 |
|---|---|---|---|
| 7〜8B | 約4〜5GB | 8GB | 要約・下書き。1〜数人の試用 |
| 14B | 約8〜9GB | 16GB | 文書作成・翻訳。部門の試用 |
| 27〜32B | 約16〜19GB | 24〜32GB | 社内チャットの実用域。1部門10〜30人 |
| 70B | 約42GB | 48GB以上 | 高い精度が要る文書。医療の要約など |
| 120B級 | 約70GB | 96〜128GB | 大きなモデルを1台で。速度は落ちる |
出所:係数と容量別の目安は株式会社AX「LLMのメモリ要件」、mypcrig「メモリ容量別 動かせるモデル早見表 2026」、自作.com「VRAM容量別 ローカルLLM動作ガイド 2026」。いずれも参考値。
見落としやすいのが「KVキャッシュ」です。これは会話の文脈(コンテキスト)を保持するためのメモリで、扱う文書が長いほど、同時に使う人が多いほど増えます。70Bクラスを4ビットで128Kコンテキストまで使うと、KVキャッシュだけで約40GB、重み本体に匹敵する量が要るという試算があります〈出所:mypcrig「コンテキスト長とVRAMの関係 2026」〉。「長い議事録を丸ごと入れて要約させたい」用途なら、上の表より1段大きい機器を見てください。
もう1つ、メモリの「帯域」が速度を決めます。容量が同じ32GBでも、帯域が3倍違えば1人あたりの応答速度は3倍近く違います。次の章と機器別の表で数字を示します。
03 · Engine
推論エンジンの選び方:Ollama か vLLM か
①推論エンジンの選択は、「同時に何人が使うか」で決まります。1人で使うなら両者の速度はほぼ同じで、人数が増えるほど差が開きます。
| Ollama | vLLM | |
|---|---|---|
| 向いている場面 | 1〜数人。まず試す。Mac1台で始める | 部門〜全社。同時に5人以上が使う。本番運用 |
| 入れやすさ | 1コマンドで導入。モデルの取得も自動 | 環境構築に手間。GPUドライバ・Python環境が要る |
| 同時利用の強さ | 同時数人で頭打ち。順番待ちが起きる | 連続バッチ処理で同時50人でも速度を維持 |
| 参考値〈公表ベンチ〉 | 同時50人で約155 tok/s(合計)で頭打ち | 同時50人で約920 tok/s(合計)を維持。同時8人で2.2〜4倍 |
| 対応機器 | Mac(Metal)・NVIDIA・CPU | NVIDIA(本流)・Apple Silicon(vllm-metal)・Tenstorrent(独自版) |
出所:Particula「Ollama vs vLLM in 2026」、runaihome「vLLM vs Ollama: When Each One Wins」、SitePoint「Ollama vs vLLM Benchmark 2026」。数値は測定環境で大きく変わる参考値。
実務での使い分けは単純です。1台で試す段階は Ollama、部門に出す段階で vLLM に載せ替える。この順で組むと、モデルの選定や業務の切り分けを Ollama で先に済ませてから、本番の推論基盤を組めます。前の記事で書いた「スモールスタート(1部門・1台)」がちょうど vLLM に載せ替える段です。
04 · Hardware
機器別の速度の参考値
前の記事で示した機器3択について、速度の参考値を並べます。繰り返しますが、筆者の実測ではなく公表ベンチマークからの引用で、機種・量子化・コンテキスト長で大きく変わります。桁を読む材料としてお使いください。
| 機器 | メモリ | 帯域 | 速度の参考値(1人で使ったとき) |
|---|---|---|---|
| Mac mini(M4 Pro) | 48〜64GB | 273 GB/s | 27〜32B 4ビットで 11〜18 tok/s。7Bで約50 tok/s、70Bで約14 tok/s |
| Mac Studio(M4 Max) | 64〜128GB | 410〜546 GB/s | 7Bで約83 tok/s、70Bで約28 tok/s |
| Tenstorrent Blackhole p150a | 32GB | 512 GB/s | 公表ベンチが少ない。8Bクラスの動作報告あり。量子化は自分で行う必要 |
| NVIDIA DGX Spark | 128GB | 273 GB/s | 20Bで約50 tok/s。70Bで約2.7 tok/s(載るが遅い) |
| NVIDIA RTX 5090(参考) | 32GB | 1,800 GB/s | 20Bで約205 tok/s。速いが高価で品薄(2026年9月) |
出所:Mac はmypcrig「Mac mini M4 実測ベンチマーク 2026」・runaihome「Mac Studio M4 Max vs Mac mini M4 Pro」・シンギュラリティ実験ノート(Qwen3.8-27B)/DGX Spark と RTX 5090 はFloat16・lecompute/Tenstorrent はThe Register・公式仕様。
読み方のコツは2つです。1つ目、「載る」と「使える速度で動く」は別。DGX Spark は128GBあるので70Bが載りますが、2.7 tok/s は1人が待てる速度ではありません(人が読む速度に追いつくには日本語で10 tok/s台は要る、というのが筆者の目安です。出所のある数値ではありません)。2つ目、帯域が速度を決める。同じ273 GB/s の Mac mini と DGX Spark は、1人で使ったときの速度が同じ帯域に縛られます。大きなモデルを載せたいのか、中くらいのモデルを速く回したいのか、先に決めてください。
おおまかに言えば、「1部門10〜30人で27〜32Bのモデルを使う」なら、メモリ32GB以上・帯域500 GB/s前後・vLLM が動く機器が1つの現実的な線です。ここに Mac Studio、Tenstorrent、あるいは業務用GPUが入ってきます。
05 · Steps
作り方:1台で動かす3ステップと、社内で使う7つの手順
まず1台で動かす最短の作り方(3ステップ)。自分のパソコンで試すだけなら、次の3つで動きます。
- Ollama を入れる。公式サイトからインストーラを取得します(Windows・Mac・Linux)。コマンドを打たずに画面で操作したい場合は LM Studio でも同じことができます
- モデルを動かす。ターミナル(WindowsはPowerShell)で
ollama run gemma3と打つと、初回はモデルを自動で取得し、そのまま会話できます。GPUが無いパソコンでは自動でCPUで動きます。モデル名は、上の早見表のメモリに合わせて Ollama のモデル一覧から選び替えてください(出所:Google「Run Gemma with Ollama」) - ブラウザの画面を付ける。ChatGPTのような画面で使うなら Open WebUI です。
pip install open-webuiで入れてopen-webui serveで起動し、http://localhost:8080を開きます。Python 3.11 が推奨されています(出所:Open WebUI 公式 Quick Start)
ここまでは個人の検証です。社内の業務で使える形にするのは、下の7つの手順で、機器を買う前に1〜2を、買ってから3〜7を進めます。順番を守るのが一番の近道で、機器から始めると余った性能に払うか、足りない性能で我慢することになります。
- 載せる業務を決める。「社外に出せない情報が入る業務」を業務名で挙げ、最初に載せる1〜3業務に絞る。ここで同時利用人数の見当がつく
- モデルを決める。用途(要約・下書き・翻訳・文書検索)と日本語性能で候補を2〜3本。商用利用のライセンスを必ず確認する(Gemma 4・Qwen3の35B以下・DeepSeek は緩い。Llama は表示義務あり。Qwen は同じ名前でもライセンスが違うモデルが混在するので、配布元のLICENSEファイルを実際に開く。出所:Gemma 4 の Apache 2.0 化(Impress Watch)・Qwen3 公式ブログ・DeepSeek LICENSE-MODEL・Llama 4 Community License)
- 機器を決める。02章の式で必要メモリを出し、03章で同時人数からエンジンを決め、04章で帯域を見る。Tenstorrent なら PCIe 5.0 x16・ATX 3.1電源・Linux のホストが別途要る
- 推論エンジンを入れる。まず Ollama で1モデル動かし、業務1つを実際に回す。ここで「使える/使えない」を1行で書く。使えないなら機器を買う前に戻る
- ゲートウェイと画面を置く。LiteLLM で窓口を1つにし、Open WebUI などで社員が使える画面にする。部門・人ごとの認証をここで入れる
- 利用記録を組む。誰が・いつ・どのモデルに・何を入れたかを残し、日次・月次の要約が出る形にする。監査・認証で説明できる粒度まで
- 検証して、ルールと一緒に渡す。速度・精度・同時利用を測り、利用範囲の線引きと運用ルール(新モデルの検証を誰がいつやるか)を文書にして引き渡す
4番で書いた「使える/使えない」の1行が、この後の全部の判断の土台になります。筆者もいま手元でこの4番を進めている段階で、実測が出たらこの記事の参考値を実測に置き換えます。
1(載せる業務)や2(モデル)で止まっている場合は、お問い合わせから、載せたい業務と使う人数をお送りください。必要なメモリの桁と、Ollama・vLLMのどちらで組むかをお返しします。
06 · Pitfalls
詰まりどころ
公表されている構築記録や仕様書で繰り返し報告されている詰まりどころです。筆者の実体験ではなく、事前に知っておくべき点として挙げます。
| 詰まりどころ | 何が起きるか・どう避けるか |
|---|---|
| 量子化済みモデルが使えない機器がある | Tenstorrent は独自のデータ型のため、配布サイトの量子化済みモデルをそのまま持ってこられず、自分で量子化する必要がある。手間を工数に入れておく |
| Mac で vLLM を動かす場合の癖 | Apple Silicon 向けの vllm-metal は MLX 形式のモデルを使う。NVIDIA 向けの手順書がそのまま使えない部分がある |
| コンテキスト長の設定でメモリが足りなくなる | 既定のコンテキスト長を伸ばした瞬間に KV キャッシュが膨らむ。長文を扱う業務は先に最大長を決める |
| 日本語の効率 | 同じ文章でも日本語は英語よりトークン数が多くなりがちで、体感速度が落ちる。日本語での tok/s を見る |
| 「1台で動いた」と「部門で使える」の差 | Ollama で1人分が動いても、同時利用で順番待ちが起きる。5人以上なら vLLM への載せ替えを最初から計画に入れる |
| 記録が後付けになる | ④利用記録を後から足そうとすると、ゲートウェイの構成をやり直すことになる。②と④は最初から一緒に組む |
最後の2つが、費用の記事で書いた「機器を買っただけでは使われない」の技術側の正体です。構築とルールは同じ工程で、片方だけでは業務に乗りません。ルール側の作り方は中小企業の生成AI社内ガイドラインの作り方に、両方をまとめて外に頼む場合の範囲と料金はサービス案内にあります。
07 · FAQ