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AIエージェントの作り方と、最初の5つの壁
この記事でできるようになること読み終えると、今日から手を動かす順番が決まり、詰まったときに何を疑えばいいかが分かります。
非エンジニアの方に実際に教えてみて分かったのは、つまずく場所がツールの使い方ではなかった、ということです。詰まるのはほぼ全部、フォルダとファイルの扱いでした。ファイルを置いたつもりで置けていない、実体ではなくリンクを渡している、どこに作ったか分からなくなる。この3つで大半です。作り方そのものは拍子抜けするほど単純で、フォルダを1つ作り、指示書を1枚入れ、日本語で頼む。それだけで動きます。
先日、Codexを一から触ってもらう勉強会を開きました。参加したのは不動産や医療の現場で働いている方たちで、プログラミングの経験はありません。普段使っているのはChatGPTです。
自分では日常的に作っているので、正直なところ「渡せばすぐ動くだろう」と思っていました。実際にやってみて、そこに勘どころが要ると分かったのがこの日の収穫です。うまくいった話より、詰まった話のほうが役に立つと思うので、そちらを中心に書きます。
01 · Steps
作り方そのものは3手で終わる
先に、身も蓋もない結論を書きます。AIエージェントを1体作る手順は3つです。
| やること | 具体的には | |
|---|---|---|
| 1 | フォルダを1つ作る | 仕事の名前をつける。「請求書」「SNS」など。場所はどこでもよく、自分の目に入るところでいい |
| 2 | 指示書を1枚入れる | その仕事は何で、どういう手順で、何をしてはいけないかを書いたテキストファイル。普通の日本語でいい |
| 3 | そのフォルダを指定して頼む | 「初期設定をやって」「このフォルダの構成を最適化して」など、やりたいことを日本語で伝える |
これで1体できます。勉強会でも、初期設定用の指示書を渡してから完了の返事が来るまで、実際の作業は数分でした。
コツを1つだけ挙げるなら、3手目で「初めて使います」と伝えることです。同じ依頼でも、前提を知らせるかどうかで返ってくる説明の丁寧さが変わります。日本語が多少崩れていても意図は汲んでくれるので、きれいに書こうとしなくて構いません。
なお、手順の途中で出てくる「プロジェクト名」は、作業に付ける名札にすぎません。中身の動きには影響しないので、自分が後で見分けられればそれで十分です。ここで悩む必要はありません。
02 · Walls
最初の5つの壁
手順は3手です。それでも、その日に起きたことはこうでした。起きた順に並べます。
| 壁 | 越え方 | |
|---|---|---|
| 1 | ファイルではなくリンクを渡していた。指示書をメールで送って受け取ったものを渡したところ、ブラウザを開こうとして止まった | メールやチャット経由で受け取ったものは、ファイルの実体ではなく入り口のことがあります。実体をフォルダに置き直す |
| 2 | 置いたつもりで置けていなかった。作業フォルダを指定したのに「何もありません」と返ってきた | 実体はダウンロードフォルダに残っていました。指定したフォルダを自分の目で開いて確認する |
| 3 | 状況の変化を伝えていなかった。ファイルを置き直したあと、同じ依頼をそのまま繰り返してしまった | 「入れ直しました」と一言添える。人間の側の変化は、こちらから言わないと伝わりません |
| 4 | 触ってほしくない場所を答えられなかった。始める前に必ず「変更してはいけないフォルダはありますか」と聞かれる | 先に決めておく。決まっていないなら、散らかっているファイルを1か所にまとめて、そのフォルダ名を伝えるだけでも効きます |
| 5 | 本人の自己申告が間違っていた。別のツールから作業を引き継げるか聞いたら「できません」と答えたが、あとから移行機能があると分かった | できないと言われたら、言い方を変えてもう一度聞く。自己申告を最終回答として扱わない |
1から3まで、すべて同じ性質の問題です。ファイルが、指定した場所に、実体として存在しているか。ここさえ押さえれば、初日の詰まりはほとんど消えます。逆に言うと、普段ファイルを意識せずに仕事をしている人ほどここで止まります。これは能力の問題ではなく、扱っている対象が変わったことに慣れていないだけです。
4番目は、安全に関わるので別に扱ってください。何でもできる相手なので、触ってほしくない場所を先に言葉にしておくのは最初の仕事です。答えを用意しないまま進めると、想定外の場所を触られます。
03 · Teach
AIから出てこないものは、人が渡す
壁を越えて動き出すと、次は「思ったような質のものが出てこない」という段階に入ります。ここで効く考え方が1つあります。
筆者はいま動画編集をAIに任せる仕組みを作っている最中で、そこでよく分かりました。「なんとなくいい感じにやって」で出てくるものは、だいたい及第点で止まります。そこから先に進めるには、人間の側が気づきを言葉にして渡す必要があります。
| 渡し方 | 返ってくるもの |
|---|---|
| 「伸びる動画を作って」 | 形にはなるが、どこかで見たものになる |
| 「伸びている動画を見て、特徴を挙げて」 | 観察結果は返るが、何が効いているかまでは分からない |
| 「尺は何秒か、カットは何枚か、音楽はどこで切り替わるか。そこが効いていると思う」 | 見るべき軸が決まり、以降は自分で当てにいける |
3行目の「そこが効いていると思う」の部分は、AIの側からは出てきません。現場で数をこなした人間だけが持っている仮説だからです。これを渡すかどうかで、出来が変わります。
手元に教材や録画があるなら、それをそのまま読ませるのも有効です。動画には文字起こしが含まれているので、内容を読み取れます。学んだことを人間が要約し直す手間が省けます。
ただし、他者の有料教材やコミュニティの中身を扱うときは、利用規約と守秘の範囲を必ず先に確認してください。技術的にできることと、やってよいことは別です。ここは自動化の対象にせず、人間が判断してください。
04 · Blind spot
教える側にも穴があった
この日、教わったのは参加者だけではありませんでした。
ある参加者から「セッションはどう管理していますか」と聞かれて、答えに詰まりました。筆者の中に、その概念がそもそも無かったからです。作業の区切りをどこで入れ、どこまでを一続きとして扱うか。言われて初めて、自分がそこを管理せずにやってきたことに気づきました。
理由ははっきりしていて、作った時期にその考え方が無かったからです。仕組みを最初に組んだときの前提が、そのまま残っていた。動いているので問題として表面化せず、指摘されるまで見えませんでした。
これは自分だけの話ではないと思います。自動化した仕組みは、作った時点の前提を固定します。動いている限り誰も見直さないので、古い前提だけが静かに残ります。定期的に人に見せて指摘をもらうのは、そのための手段として効きます。教える側になると、自分の穴が見えるという副産物があります。
どの仕事から任せるか、どこで人間が止めるか。手元の業務を一緒に棚卸しするところからご相談いただけます。
- 自社の業務をAIエージェントに置き換えて運用中
- 建設・IT・SaaSの企業でAI顧問として継続支援中
- 研修は年間50回以上・延べ受講者1万人以上
05 · Daily
動き出したあと、日常はどう変わるか
1体目が動くと、次は「もっと任せられないか」という方向に進みます。参考までに、筆者の手元でいま動いているものを書きます。
| やらせていること | 中身 |
|---|---|
| 毎日18時の片付け | ダウンロードフォルダの中身を全部見て、内容に応じてクラウド上のフォルダへ仕分ける。フォルダは空になる |
| 確定申告 | カードの明細を渡し、経費に入れるものと入れないものを1件ずつ判断させる。会計ソフトに直接つないで処理し、作業時間はおよそ3時間〈実測〉 |
| 請求書 | 「今月はこうだった」と伝えると、取引先・金額・項目を組み立てて発行まで進める |
| 朝の情報収集 | 担当を分けた複数の担当が、それぞれの分野を調べてチャットに報告を投げる |
| サイトの運用 | 検索順位の記録、競合の分析、記事の改稿案づくりまで。公開だけは人間が承認する |
数で言うと、まとめ役にあたるものが8体ほど、その下で個別の作業をするものが多数、という構成です。体数を増やすこと自体が目的ではありません。1日の仕事を書き出して、対面でなければ成立しない仕事以外を1つずつ移していったら、結果としてこうなった、という順番です。
始めるときの問いはシンプルで構いません。「自分の1日の仕事のうち、任せられないものはどれか」。この聞き方で相談すると、思ったより残らないことに気づきます。そこが面白いところです。
増えてくると散らかります。同じ情報が別の場所にできたり、どこに何があるか人間が追えなくなったりします。月に1回か2回、「いまの構成を整理してください」と頼むのを習慣にしておくと維持できます。
06 · Judgement
最後に残るのは、採否を決める仕事
ここまで書いておいて何ですが、任せるほど人間の仕事が消えるわけではありません。形が変わります。
エージェントは提案もしてきます。「この頻度に変えたほうがいい」「この手順は不要では」といった具合です。数が増えると提案も増えます。そして、その提案が本当に良いかを判断するのは人間です。ここは渡せません。
もう1つ、渡さないほうがいい領域があります。外に出る操作です。公開する、送信する、支払う。作るところまでは任せて、外に出す一押しだけは自分でやる。筆者はサイトの記事を書き換えるところまでAIに任せていますが、公開は必ず自分で承認します。作る速度が上がるほど、この一拍の価値が上がります。
ログインのように取り扱いに注意が要る操作は、そもそも本人が止まって人間に渡してきます。止まったら素直に自分で入力してください。止まるのは不具合ではなく設計です。
07 · FAQ