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AI研修に使える助成金は?
この記事でできるようになること読み終えると、AI研修に使える助成金の制度名と自社が対象になる条件、申請までの段取りを自分で判断できるようになります。
AI研修(生成AI研修・AIエージェント研修を含む)の費用に使える助成金は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。研修の内容・目的に応じて、主に次の3コースが入り口になります(中小企業・2026年7月時点、出典:厚労省 詳細版パンフレット 令和8年5月14日版)。
- 事業展開等リスキリング支援コース——DX・新規事業のためのAI研修。経費助成75%+賃金助成1人1時間1,000円。令和8年度末までの時限措置で、今年度が最終年度です。
- 人への投資促進コース——高度デジタル人材訓練75%、定額制(サブスク型)訓練60%など。こちらも令和8年度末までの時限措置。
- 人材育成支援コース——日常業務のためのAIリテラシー研修。経費助成45%(賃金要件等を満たすと60%)。
これは研修(人材育成)への国の助成で、ツール導入への「補助金」(経済産業省・自治体系)とは別物です。どのコースに当てはまるかは研修の内容と自社の状況で変わり、最終判定は管轄の労働局と、申請を担う社会保険労務士(社労士)が行います。私たち(合同会社ゼネラリスト)は助成金の要件に合う研修の設計までを担い、申請書類の作成・提出は社労士と連携します。対象になる条件と申請の手順は、それぞれ独立した章で解説します。
「AI研修を入れたいが、費用の一部を助成金でまかなえないか」——そんな中小企業に向けて、厚生労働省の人材開発支援助成金を軸に、対象コース・助成の条件・助成率・申請の手順を、研修を提供する側の現場目線で整理しました。生成AI研修だけでなく、AIエージェント研修・AI人材育成の計画にも使える話です。補助金との違いも解説します。制度の金額・要件・期限は変わるため、必ず最新の公式資料・管轄の労働局でご確認ください。
01 · Basic
「助成金」と「補助金」は別物
最初に、言葉を整理します。AI関連の公的支援を調べると「助成金」と「補助金」が混ざって出てきますが、この2つは所管も対象も違います。ここを取り違えると、探す窓口も申請の相手も間違えてしまいます。
- 助成金(厚生労働省)=人(研修)への支援。従業員に訓練を受けさせる「人材育成」の取り組みに対して、訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成します。AI研修の費用が関わってくるのは、主にこちらです。要件を満たせば支給される性格のものが中心で、この記事の主役は人材開発支援助成金(厚労省)です。
- 補助金(経済産業省・自治体など)=モノ(ツール導入等)への支援。ソフトウェアやシステムの導入費用などが対象になりやすく、公募期間内に申請し、審査・採択を経て交付されます。研修そのものより「AIツールを入れる」フェーズで関わることが多いものです。
なお、以下で扱う金額・助成率・上限・要件・期限はいずれも2026年7月時点の情報です。制度は年度ごとに改正され、予算の消化状況でも受付が変わります。実際の適用可否は、必ず最新の公式資料と管轄の労働局でご確認ください。
02 · Course
AI研修に使える助成金はどれ?対象コースの交通整理
人材開発支援助成金には複数のコースがあり、AI研修が関わり得る代表は次の3つです。「AI研修だからこのコース」と一律に決まるわけではなく、研修の内容・目的・対象者で当てはまるコースが変わります。混同されやすいので、目的の違いで並べて整理します。
表:AI研修が関わり得る主なコースと助成率(中小企業・2026年7月時点/出典:厚労省 詳細版パンフレット 令和8年5月14日版)
| コース | 対象・目的 | 主な研修要件 | 向くケース | 助成率(中小企業) |
|---|---|---|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連した知識・技能を習得させる一般的な訓練 | OFF-JTで10時間以上 | 日常業務のためのAIリテラシー・実務研修 | 経費45%(賃金要件等で60%)+賃金助成800円/人時(同1,000円)公式PDF |
| 人への投資促進コース (デジタル人材育成訓練 等) | デジタル・高度人材の育成、定額制(サブスク)研修など | コース内メニューごとに要件・対象訓練が異なる | DX・デジタル分野に踏み込んだ育成、定額制eラーニング | 高度デジタル人材訓練75%/定額制訓練60%(賃金要件等で75%)ほかメニュー別 公式PDF |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業・DX化・GX化に伴い新たに必要となる知識・技能 | OFF-JTで10時間以上+事業展開等実施計画の提出 | DX推進や新事業のためにAIスキルを新たに習得させる | 経費75%+賃金助成1,000円/人時(1人あたり上限あり)公式PDF |
※ コース名・対象・要件・助成率は2026年7月時点(令和8年5月14日版パンフレット)。上限額や加算の条件は次章で解説します。人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置です。自社がどのコースに当てはまるかの最終判定は、管轄の労働局・社労士へ。
03 · Rate
助成率・上限はいくら?令和8年度の公式数値と改正の注意
助成は「経費助成(研修費用への助成)」と「賃金助成(訓練中の賃金への助成)」に分かれ、中小企業か否か、賃金要件などの追加要件を満たすかで変わります。以下は厚労省の詳細版パンフレット(令和8年5月14日版)に基づく2026年7月時点の数値です(出典:事業展開等リスキリング支援コース 詳細版/人材育成支援コース 詳細版)。
- 事業展開等リスキリング支援コース(中小企業):経費助成75%+賃金助成1人1時間あたり1,000円。経費助成の上限は1人1訓練あたり、実訓練時間10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円。eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練は経費助成のみです。1事業所が1年度に受給できる助成額の上限は1億円。
- 人への投資促進コース(中小企業):高度デジタル人材訓練は経費75%+賃金1,000円/人時、定額制訓練は経費60%(賃金要件等を満たすと75%)。メニューごとに要件・上限が異なります。
- 人材育成支援コース(中小企業):経費助成45%が基本、賃金要件等を満たすと60%。賃金助成は1人1時間あたり800円(同1,000円)。非正規雇用労働者向けの訓練では率が上がるメニューもあります。
- 「75%」にも前提条件がある。リスキリング支援コースの75%は中小企業の基本率ですが、「事業展開・DX化・GX化に関連する訓練」というコース該当要件と、上記の1人あたり上限額が前提です。どんなAI研修でも無条件に費用の75%が戻るわけではありません。
令和8年度の改正・期限で押さえておくこと
2026年度(令和8年度)には、実務に効く改正と「期限」があります。研修を検討する前に知っておくと、あとで慌てずに済みます(出典:人材開発支援助成金(厚労省))。
- 人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末までの時限措置。つまり2026年度がこの高助成率を使える最終年度です(パンフレット記載。延長の有無は今後の公表を要確認)。計画届は訓練開始の1か月前までに必要なので、使うなら前倒しで動くのが安全です。
- 疎明書(受講料等の価格設定に関する疎明書/様式第28号)の提出が必須化。厚労省は令和8年5月14日より、支給申請時にこの疎明書の提出を求めています(同日時点で支給・不支給が決定していない申請にも適用)。受講料の妥当性を示す書類で、研修提供者側の協力(価格の根拠の提示など)が必要になる場面です(一次情報:申請書類一覧(厚労省))。
- 設備投資加算の新設(リスキリング支援コース・中小企業のみ)。訓練で習得したスキルを活かす機器等を新たに導入した場合、賃金要件または資格等手当要件を満たすことを前提に、導入費用の50%(支給対象労働者1人につき15万円、10人以上は150万円が上限)を加算できます。実技訓練で実際に機器を使うことなどの要件があります。
- 人材育成支援コースに中高年齢者実習型訓練を新設など、コースごとの加算・要件の見直しがあります。最新の詳細版パンフレットで確認してください。
04 · Target
AI研修が助成金の対象になる条件(研修を提供する側から見て)
助成金の対象になるには、会社と研修そのものが一定の条件を満たす必要があります。ここは研修を提供する側の設計に直結する部分です。代表的な条件を、実務の感覚を添えて挙げます(2026年7月時点。正確な要件は各コースの支給要領が正)。
- 会社が雇用保険適用事業所であり、受講者が雇用保険の被保険者であること。対象労働者は原則として雇用保険の被保険者である従業員です(この点は落とし穴の章で詳しく触れます)。
- OFF-JT(通常の業務を離れて行う訓練)であること。日常業務の中で教えるOJTではなく、業務から切り離した「研修」として実施する形が基本です。
- 実訓練時間が10時間以上であること。人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コースとも、10時間以上のOFF-JTが基本要件です。単発の短い説明会では時間要件を満たせません。
- (リスキリング支援コースの場合)事業展開・DX化・GX化に関連する訓練であり、「事業展開等実施計画」を計画届と併せて提出すること。事業展開は、訓練開始日から3年以内に実施予定のもの、または6か月以内に実施したものである必要があります。
- 計画・記録・出席などの書類要件を満たすこと。訓練の実施計画、当日の出欠や時間の記録などが後の支給申請で必要になります。
研修の素の相場感(助成金を使わない場合の費用の目安)や、依頼先の選び方は、別記事にまとめています。あわせてどうぞ。
05 · Scale
会社の規模で「助成金の使いやすさ」は変わる
制度上の助成率そのものは、中小企業であれば規模で大きくは変わりません。ですが、「申請を実際に通しきる実務のしやすさ」は、従業員の人数で変わってきます。研修を提供する側として、事前のヒアリングで「この規模なら、ここでつまずきやすい」という傾向は見えてきます。あくまで傾向で、自社が該当するかの最終判定は管轄の労働局・社労士ですが、研修を組む前の見取り図として整理します。
表:会社の規模別・助成金申請でつまずきやすい点(提供者視点の傾向・2026年7月時点/最終判定は労働局・社労士)
| 規模の目安 | つまずきやすい点 | 研修設計側で先に整えること |
|---|---|---|
| 10名未満 (小規模) | 就業規則や社内の教育体制など、申請に必要な社内書類が未整備なことが多い。全員を同じ研修時間に揃えるのが難しく、立替の負担も相対的に重い。 | 受講の日時候補を早めに複数用意し、少人数でも時間要件を満たせる形にする。書類面は社労士に早期に接続。 |
| 10〜50名 | 対象者(雇用保険の被保険者)とそうでない人が混在しやすく、計画どおりの受講時間・受講場所の確保が現場の繁忙とぶつかる。 | 研修前に対象者を洗い出し、複数日程・録画併用などで受講を取りこぼさない設計にする。 |
| 50名以上 | 拠点や部署が分かれ、出欠・実施記録の管理が煩雑になる。計画の粒度が粗いと、後の支給申請で書類が揃わない。 | 部署・拠点単位で計画を切り、記録の取り方を最初に決めておく。年度あたりの上限額も見ておく。 |
※ 規模の区分・つまずきやすい点は、研修提供者として見てきた傾向であり、助成の可否や区分(中小企業/小規模事業者)の判定基準ではありません。正確な区分と要件は各コースの支給要領・管轄労働局・社労士でご確認ください。
06 · Flow
助成金の申請手順|社内計画 → 計画届 → 実施 → 支給申請
助成金は「研修をやったあとに申請すればもらえる」ものではありません。研修を始める前の「計画届」が起点で、さらにその前提として社内の育成計画の整備が求められます。ここを外すと対象にならないので、締切に一番気をつけたい部分です。代表的な流れは次のとおりです(コースにより細部は異なります)。
STEP 00
社内の育成計画の整備
申請の前提として、職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・従業員への周知が必要です。AI人材育成を助成金に乗せるなら、まず「会社としてどう人を育てるか」の計画をここで形にします。
STEP 01
計画届の提出
訓練の実施計画を、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に管轄の労働局へ提出。リスキリング支援コースは事業展開等実施計画も併せて提出します。ここが最重要。提出前に研修を始めると対象外になり得ます。
STEP 02
訓練の実施
計画どおりにOFF-JTを実施。訓練時間の要件(10時間以上)を満たし、出欠・実施時間を記録します。受講時間・受講場所を計画どおりに守ることが、後の支給に効きます。
STEP 03
支給申請
訓練終了日の翌日から原則2か月以内に支給申請。訓練経費は支給申請までに全額支払いを終えている必要があります。令和8年度は疎明書(様式第28号)などの書類も必要です。期限を逃すと受給できません。
STEP 04
審査・受給
労働局の審査を経て、要件を満たしていれば支給されます。書類の不備や要件の未充足があると、減額・不支給になることがあります。
07 · Cost
実質いくら?費用シミュレーション
「助成率が45%や75%なら、実質いくらになるのか」をイメージするための、あくまで目安の試算です。当社で助成金の対象になる研修(12時間カリキュラム)は受講されるお一人あたり30万円〜のため、ここではお一人あたりの定価30万円を例にしています。下表は「経費助成のみ」を単純化して示したもので、実際には賃金助成が別途加わったり、上限・要件充足の有無で変わります。この表は概算のイメージであり、実額を保証するものではありません。(正確な料金は料金ページ、実額は管轄労働局/社労士にご確認ください)
表:経費助成の実質負担イメージ(受講者お一人あたり・2026年7月時点・要件充足時の目安・断定不可)
| 研修費用(定価の例・お一人あたり) | 経費助成率(目安) | 実質負担の目安 |
|---|---|---|
| 30万円 | 45%(人材育成支援コース・基本) | 約16.5万円 |
| 30万円 | 60%(同・賃金要件等の充足時) | 約12万円 |
| 30万円 | 75%(事業展開等リスキリング支援コース該当時) | 約7.5万円 |
※ 2026年7月時点の目安。経費助成のみを単純計算した概算で、賃金助成・上限額(リスキリング支援コースは1人1訓練30万〜50万円など)・対象経費の範囲・要件充足の有無は反映していません。実額は必ず管轄労働局/社労士に確認してください。75%は事業展開・DX化等に関連する訓練というコース該当要件を満たした場合であり、無条件ではありません。
実質負担が下がるぶん、要件に合うなら助成金は積極的に使うべきだと考えています。ただし、「助成金が使えるから」を理由に研修の中身を痩せさせるのは本末転倒です。目的はあくまで現場でAIが使われるようになること。助成金は、そのための費用を軽くする手段にすぎません。
助成金を使わない場合の素の相場(講演・単発レクチャー15万円〜、12時間の法人研修など)は、別記事に整理しています。
生成AI研修の費用相場(形態別の料金目安・内訳)→ / 札幌で頼む場合の選び方・進め方 → / 当社の料金の全体像を見る →
08 · Cases
うちの場合はどうなる?受講人数別の実額と、対象になる/ならない
前章は「お一人あたり」の話でした。実際にご相談をいただくときに必ず聞かれるのは、「うちは◯人受けさせたい。結局いくら残るのか」です。ここでは人数別に、そして「うちのこの人は対象になるのか」を、条件ごとに整理します。
受講人数別|総額と実質負担の目安
12時間カリキュラム(お一人あたり定価30万円・税別)を、事業展開等リスキリング支援コース(中小企業・経費助成75%)に該当した場合で試算します。賃金助成(1人1時間あたり1,000円)も12時間ぶん加えています。
表:受講人数別の実質負担イメージ(経費助成75%+賃金助成が適用された場合の目安)
| 受講人数 | 定価(税別) | 経費助成75% | 賃金助成 | 実質負担の目安(1人あたり) |
|---|---|---|---|---|
| 3人 | 90万円 | ▲67.5万円 | ▲3.6万円 | 約18.9万円(1人 約6.3万円) |
| 5人 | 150万円 | ▲112.5万円 | ▲6万円 | 約31.5万円(1人 約6.3万円) |
| 10人 | 300万円 | ▲225万円 | ▲12万円 | 約63万円(1人 約6.3万円) |
※ 2026年7月時点・要件を満たした場合の単純計算による目安で、実額を保証するものではありません。経費助成には1人1訓練あたりの上限(実訓練時間10時間以上100時間未満で30万円)があり、この試算では1人あたりの助成額22.5万円が上限内に収まっています。賃金助成にも1人あたりの上限があります。1事業所が1年度に受給できる助成額の上限は1億円です。実額は必ず管轄労働局/社労士にご確認ください。
この人は対象になる?|迷いやすい6つのケース
人材開発支援助成金は「雇用保険の被保険者」であることが土台です。ここを起点に考えると、多くのケースは判断がつきます。ただし最終判定は管轄の労働局と社労士で、下記はあくまで相談前の見立てです。
- 正社員 ── 雇用保険の被保険者であれば土台の条件は満たします。最も素直なケースです。
- パート・アルバイト ── 一律に対象外ではありません。雇用保険の被保険者かどうかで判断が変わります。加入していれば検討の余地があります。
- 役員 ── 雇用保険の被保険者でない場合が多く、その場合は土台の条件を満たしません。一人社長・役員だけの会社では使えないことがあるという点は、先に押さえておいてください。
- 入社したばかりの社員 ── 被保険者であるかが起点です。ただしコースごとに対象者の要件が定められているため、ここは個別確認が要ります。
- 複数拠点の社員をまとめて ── 助成額の上限は1事業所1年度あたりで見ます。拠点の分け方によって扱いが変わるため、計画届の前に確認してください。
- すでに他の研修で助成を受けた社員 ── 経費助成の上限は「1人1訓練あたり」で、1年度内の受給回数にも定めがあります。年度内に複数回を予定している場合は、順番と時期の設計が要ります。
eラーニングで受けさせたい場合
eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練は、経費助成のみが対象で、賃金助成は付きません。上の試算表から賃金助成のぶんが外れる、と考えてください。10人なら12万円ぶん実質負担が増える計算です。
受講時間の確保が難しい職場ではeラーニングが現実的な選択になりますが、「見て終わり」になりやすいのも事実です。当社が12時間の集合型で組むことが多いのは、手を動かす時間を確保しないと現場で使われないという実感からです。制度の都合と定着のしやすさは、必ずしも一致しません。
09 · Hokkaido
札幌・北海道の独自補助金は「研修助成」とは別物
札幌市や北海道、経済産業省 北海道経済産業局などが、DX・IT導入向けの補助金を用意していることがあります。ただし、これらは多くが「AIツール・システムの導入」に軸足のある補助金で、ここまで説明してきた厚労省の「研修への助成」とは制度も所管も別です。混ぜて考えると、探す窓口も要件も食い違ってしまいます。
- 研修費用を軽くしたい → 厚労省の人材開発支援助成金(本記事の主役)。窓口は管轄の労働局、申請実務は社労士。
- AIツール・システムの導入費を軽くしたい → 経産省・自治体系の補助金。窓口は北海道経済産業局や札幌市・商工会議所など。公募期間・審査があり、時期により内容が変わります。
ツール導入や顧問活用と、札幌市・北海道のDX補助金の関係は、別記事でも触れています。
10 · Pitfall
助成金ありきで進めるときの落とし穴
助成金は有効ですが、「もらえること」を前提に走り出すと、思わぬところでつまずきます。研修を提供してきた立場から、実際に起きやすい落とし穴を共有します。
- 受講時間・受講場所を計画どおりに守るのが、実務では想像以上に大変。研修は業務時間内に行うため、対象の従業員全員の受講時間を合わせること、決めた受講場所を守ることが必要です。助成金の対象になるには、この「計画どおりの実施」を厳守しなければなりません。現場のシフトや繁忙とぶつかりやすい、地味だが重い論点です。
- 対象労働者の要件を満たさない従業員が混ざると、その分が対象外に。対象は原則雇用保険の被保険者です。実際に、書類申請の段階で要件を満たさない従業員がいて、その方が対象外になったケースがありました。「社会保険」と混同されやすい点にも注意が必要です(雇用保険と社会保険は別の制度。正確な適用範囲は要確認)。誰が対象になるかを、研修を組む前に洗い出しておくのが安全です。
- 「来年でいいか」と先送りすると、コース自体が終わっている可能性。人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末までの時限措置です。計画届は訓練開始の1か月前までに必要なため、年度末ぎりぎりの駆け込みは間に合わないことがあります。
- 「助成金が出るから」を目的化すると、中身が痩せる。助成率に合わせて研修を薄くしたり、要件を満たすためだけに時間を水増ししたりすると、現場で使われない研修になりがちです。目的は業務が回ること。助成金はその手段、という順番を崩さないことが大切です。
- 締切と書類。計画届(開始1か月前まで)と支給申請(終了後2か月以内)の締切、令和8年度の疎明書など、事務の要件を外すと受給できません。ここは社労士と早めに握っておきます。
11 · Position
私たちの関与範囲|研修設計はする、申請は社労士と連携
ここは誤解が生まれやすいので、はっきり書きます。助成金の申請書類の作成・提出の代行は、社会保険労務士(社労士)の独占業務です。私たち(合同会社ゼネラリスト)は「当社が助成金を申請します」とは言えませんし、しません。私たちが担うのは、あくまで研修の側です。
- 担うこと:助成金の要件(OFF-JT・時間要件など)に合うように研修カリキュラムを設計し、業務課題に沿った中身に作り込むこと。研修の実施と、受講料の根拠など提供者側で必要な情報の提示。
- 担わないこと:助成金の申請書類の作成・提出。これは社労士に連携します。採択(受給)の保証もしません。
「うちの場合はどのコースが当てはまりそうか」「研修をどう組めば要件に乗るか」の見立てから、お手伝いできます。最終的な適用可否・申請は、労働局と社労士の判断になります。
12 · FAQ